統合失調症

身近な病気「統合失調症」

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精神疾患のうち、うつ病に次いで多くの方々が患っておられるのが「統合失調症」です。

20歳代前後で発病することが多く、およそ100人に1人がかかる脳神経の病気です。現在日本では約80万人の方が、この病気で治療を受けています。

◆どんな症状?

初期の症状は幻聴(悪口や指示などの幻の声)が聞こえて不安になったり、妄想(現実とは異なることを強く思い込む)が出て混乱したりします。これらには薬が比較的よく効き、気持ちが安定します。

しかし、これらの症状が軽快後、人付き合いが苦手になる、疲れやすいなどの状態が続くことがあり、その回復には時間がかかります。

◆原因は?

原因はまだはっきり分かっていません。脳の中で働く物質のバランスが乱れるために、このような症状がおこると考えられています。「高血圧になりやすい体質」や「糖尿病になりやすい体質」があるのと同じで、体質的に脳神経の働きの一部に失調をきたしやすい人が、何らかのストレスなどをきっかけに発病するのではないかと考えられます。親の育て方や本人の気の持ちようが原因ではありませんし、特定の家系に現れるような遺伝病でもありません。また、強いストレスにさらされると誰にでも起こる可能性があります。このような意味で、統合失調症は特別な病気ではありません。

◆治療は?

現在では薬による治療やリハビリテーションが進歩し、利用できる制度・施設も増えたため、入院せず外来で治療できることが多くなっています。症状があれば気軽に精神科を受診されるとよいでしょう。初めは本人自身が病気と気づきにくいことがありますので、周囲の人が受診を勧めてあげてください。

◆治るの?

だんだんよくなります。薬をのみ、強いストレスを避け、回復段階にあわせた活動を生活に取り入れることで徐々に元気になります。

後遺症として一定の「苦手なこと」が残ることがありますが、最近ではそれらと折り合いながら職場や家庭で活躍される方が多くなってきました。

病気とうまくつきあう方法を身につければ、再発(一旦改善した病状が再び悪化すること)から遠ざかることもできます。

◆この病気について相談できるところは?

病院や診療所の精神科、保健センター、こころの健康増進センター、障害者地域生活支援センターなど、いろいろなところで相談できます。どこに相談すればよいか分からない場合は、お住まいの地区の保健センターに連絡するとよいでしょう。

病気の経過と各段階の治療

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1.前駆期

病気の前触れの時期です。眠りが浅く感情が不安定になり、周囲からみて性格が変わったように感じることがあります。

2.急性期

眠れなくなり、幻聴や妄想が現れます。幻聴とは、実際には言われていない声や話が聞こえる症状です。自分の悪口やうわさ話などが多いようです。妄想とは、現実とは異なることを強く思い込む症状です。狙われている、陥れられるなどの内容が多いです。これらのため、ますます不安感が強まります。混乱してまとまりのない会話になったり、周囲の状況に全く反応できなくなったりすることもあります。

【急性期の治療は】

精神科を受診し、薬を処方してもらいます。薬をのんでゆっくり休養すれば、これらの症状の多くは改善します。

3.休息期

急性期の症状が改善すると、疲労感が強く意欲や集中力の低下した時期に入ります。「消耗期」とも言います。子どもに返ったように、ご家族に甘える人もあります。その期間は個人差がありますが、通常数ヶ月から数年間続きます。

【休息期の治療は】

まずはゆっくり休むことです。急性期に消耗した神経の回復のために、睡眠をたっぷりとりましょう。仕事や気疲れする場面など、神経を使うことはしばらく控えます。少しずつ疲れがとれてきたら、身の回りの気楽な活動(テレビや散歩など)から始めてみましょう。
医師は薬を徐々に減らしますが、再発(再び急性期がくること)を避けるため、状態が安定したように見えても少量の薬を継続するのが一般的です。

4.回復期

新聞や本が集中して読めるようになり、外出したい気持ちが出てきたら回復期の入り口です。徐々に元気になり、職場や家庭に復帰していきます。しかし、病気になる前に比べると、対人関係が不器用になる、緊張しやすい、仕事が覚えづらい、段取りが悪くなる、疲れやすいなどの状態が持続することも多いです。

【回復期の治療は】

リハビリテーションをしましょう。 OT(作業療法)やSST(社会生活技能訓練)、デイ・ケアなど、ご自分に合ったリハビリテーションはどのようなものか、主治医と相談するといいでしょう。リハビリテーションは、以下のようなことを目標として、薬物療法など他の治療法と組み合わせながら行われます。

  • 規則的に外出し、生活リズムを整え体力の回復を図る。
  • 人付き合いに慣れる。
  • 病気とのつきあいかたを身につける。
  • 利用できる施設や制度の情報を得る。
  • 集中力や対人技能などの回復を図る。

就労のためのリハビリテーション

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「病気になってから仕事がうまくいかない」「長続きしない」という方で、今後の就労を希望される方は、回復の状態に応じたリハビリテーションを利用しましょう。働くためのリハビリテーションのポイントには、以下のようなことがあげられます。

  • いろいろな働き方や社会資源(就労支援や生活支援)の利用方法を知り,進路を考える。
  • 毎日外出して活動できる気力,体力を回復させる。
  • 仲間と出会って元気と自信を取り戻す。
  • 働くための対人関係に慣れる。
  • 病気とつきあいながら働く方法を身につける。
  • 職場実習で職場環境に慣れる。
  • 各人に応じた個別の就労支援を得る。
  • 関係機関(ハローワークなど)と連携した支援を得る。

京都市こころの健康増進センターデイ・ケア課では,平成18年度から「就労準備デイ・ケア」を実施し,統合失調症圏の方の就労支援を行っています。