その他の依存(薬物・ギャンブルなど)
さまざまな薬物
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脳神経系に作用する薬物はおおまかに、
- 規制されている薬物(覚せい剤、マリファナ、コカインなど)
- 医師の処方せんが必要な薬物(向精神薬)
- 市販されているが年齢規制のある薬物(アルコール、タバコ=ニコチン)
- 市販されている薬物(咳止め薬、鎮痛薬など)
に分けることができます。
いわゆる「危険ドラッグ」のように「違法ではない」ことをうたいながら、実は依存性や急性の精神作用等で人体に害のある薬物も存在します。
法的に規制されている薬物(違法薬物)
覚せい剤(アンフェタミン類)は、一時的に精神的・身体的な興奮・緊張度を高める薬剤です。急性中毒症状として興奮、気分高揚、万能感、過覚醒、不安感、イライラ、知覚過敏、幻覚、不眠、食欲減退、頻脈、血圧上昇、けいれんなどを引き起こすことがあります。薬が切れると疲労、脱力、抑うつ、眠気、過食などが現れます。使用を繰り返すと、早い時期に依存を形成し、行動の異常が現れたり、意欲が減退したり、情動が不安定になったりする傾向がみられます。使用を止めても、長期にわたりイライラしやすい傾向が続きます。慢性中毒になると、被害関係妄想・幻覚などがみられ、少量でも再使用すると、激しい精神症状が出現することがあります。フラッシュバック(不眠、疲労、ストレスなどを契機として精神症状が再燃すること)という現象も起こります。
ほかに、大麻(マリファナ、ハッシッシ)、アヘン(けし、モルヒネ、ヘロイン)、コカイン、LSD(リゼルギン酸ジエチルアミド)、マジックマッシュルーム、MDA、MDMAなどが規制薬物とされ、危険ドラッグと呼ばれているものも規制対象として順次追加されています。
処方箋が必要な薬物
中枢神経系に作用する薬物には、抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬などがあります。依存性が問題になるのは、睡眠薬として使用されるバルビツール系薬剤、ブロム系薬剤と、睡眠薬・抗不安薬として使用されるベンゾジアゼピン系薬剤、抗うつ薬の一部(SSRI)、一部の鎮痛薬などです。特にベンゾジアゼピン系薬剤は、精神科以外の医師からもしばしば処方されています。これらは、アルコールに似た依存性を示します。ほかにメチルフェニデート(商品名リタリン)も依存性があります。いずれも、医師の指示のもとできちんと使用することが重要です。自分の状態を主治医ときちんと相談しながら、処方してもらうようにしましょう。
なお、抗うつ薬(三環系・四環系)や抗精神病薬などは、基本的に依存を起こすことはありません。
市販されている薬物
タバコ(ニコチン):タバコのけむりには4000種類の化学物質がふくまれ、体に害のあるものは200種類以上あるといわれています(ニコチン、一酸化炭素、アンモニア、ダイオキシン、タール等:タールは 発ガン性のある物質の集まり)。ニコチンは、強い精神依存性があり、身体的にはタールなどの有害物質が複合的に害をあたえます。
市販されている鎮咳剤、鎮痛薬に依存性のある薬物が含まれていることもあります。用法、用量などをきちんと守り、勝手な飲み方をしないように注意しましょう。市販薬で効果が得られないときには、むやみに量を増やすのではなく、医師に相談しましょう。
ギャンブルなどへの依存
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以前から「仕事中毒」などという表現もあり、何かにのめりこんで生活のバランスを失ってしまう人がいることは、多くの人が理解できることでしょう。ギャンブルへの依存については、「病的賭博(病的ギャンブリング)」として医学的な診断基準に取り上げられています。
このような「ある特定の行為そのものに対して依存していく」という行動パターンは、薬物などへの依存(物質依存)と区別して、「プロセス依存」や「プロセス嗜癖」と呼ばれます。
依存症からの回復
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まず予防
いったん依存症になると、その治療や回復には大変なエネルギーが必要です。依存症はいずれも生活習慣病、慢性疾患と考えられます。たとえば「飲酒する」という生活習慣がなければ、アルコール依存症にはなりません。これは典型的な生活習慣病だと言えるでしょう。そこで予防が重要となりますが、初めての飲酒は、子どものころに親や親族に勧められたというケースがほとんどであるとの統計もあります。まずは大人が、アルコール・薬物の問題について理解することが大切です。新たな依存性のある薬物も次々と登場してきます。現代社会は、青少年を含め一般の人々が、容易に薬物を入手できる環境にあります。依存薬物に対する正しい知識を持つことは重要です。
依存症は病気です
依存症は「否認の病」といわれます。ご本人が病気と思わないだけでなく、周囲の人も、性格の問題、意志が弱い、人格の偏りなどと評価しがちで、病気と考えず、対応が遅れることが多くなります。「依存症は病気だから、きちんとした診断・治療が大切で、回復が可能だ」という認識が必要です。
すぐに治療が難しくても…
ご本人の否認が強いために自分の問題を認識しづらく、なかなか受診してくれないので困っている、というご家族が保健センターなどに相談されることがあります。ご家族自身が困っておられるということでは「当事者」です。ご本人をすぐに医療につなぐことは難しくても、ご家族自身の問題として整理していくことは重要です。
他の依存症・嗜癖の治療と回復
依存症になれば対象となる行為のコントロールができなくなるわけですから、「完全にやめること」が原則です。これは、アルコール以外の薬物依存、プロセス依存の場合も同様です。治療開始時には医療が一定の役割を果たしますが、長期的には、薬物依存症であればNA(Narcotics Anonymous、本人のためのグループ)、DARC(ダルク、Drug Addiction Rehabilitation Center)、NARANON(ナラノン、家族・友人・関係者のためのグループ)など自助グループやリハビリ施設の利用が有効となるでしょう。
プロセス嗜癖では、ギャンブルの自助グループにGA(Gamblers Anonymous、本人のためのグループ)、GAMANON(家族・友人・関係者のためのグループ)があります。摂食障害でも、自助グループがあります(NABAなど)。タバコの場合は、病院に禁煙外来をもつところが増えつつあります。