自殺予防自死遺族支援

自殺とその予防

自殺の多くは追い込まれた末の死です

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 日ごろ私たちは、何かストレスを抱えたとき、趣味や休息で気分転換をはかったり、話を聞いてもらうなどいろいろな方法でストレスを解消しています。しかし今まで以上に対処が困難なことに出会うと、気分転換ではどうにもならなかったり、人に話すことではないと思い込み相談機関に辿りつけなかったりで、無力感や孤立感が募り、状況はどんどん悪化していきます。

 自殺は、過労や多重債務、生活の困窮、病気、いじめ、子育て、介護、人間関係のストレスなどいくつもの事情が複雑に絡み合い、疲れ果て、追い込まれた末の死であると言われています。そのような状況の中で自殺の直前には、うつ病やアルコール依存症などこころの病気を発症している人が多いこともわかってきました。

 複雑な現代社会では、私たちの誰もが生き辛さを抱えながら、何とか折り合いながら暮らしています。自殺の多くは、そういう生き辛さに対して頑張っても思うような結果を得られず、次第に追い込まれた末に起こってしまうのです。

 自殺は決して個人的な問題ではありません。この社会に生きる私たちがお互いのいのちとこころを大切に、一緒になって向き合っていくべき問題です。

コラム

研究から明らかになってきた自殺の危険因子

    • 以前から、自殺死亡率は高齢化率、失業率、酒類の消費量などと関連があるといわれる。
    • 都道府県別の自殺死亡率集計の研究から
      • 「65歳以上人口比率」「過去3年間の完全失業率」により、自殺死亡率の一定の推計が可能 (平成20年版「自殺対策白書」)
    • 自殺予防総合対策センターによる「自殺予防と遺族支援のための基礎調査」において検証された自殺の危険因子
      • 「死について口に出す」「身辺整理」「不注意・無謀な行動」「自傷・自殺未遂の経験」など
      • 家族・友人・同僚の自殺・自殺未遂
      • 公共料金の滞納や返済期限の遅れなどを伴うほどの借金
      • 職場の配置転換・異動に関する悩み
      • 子ども時代の虐待・いじめ
      • 家族や地域との交流の少なさ
      • 日常生活に支障をきたす身体的問題
      • うつ病・アルコール依存・精神病性障害等
      • 眠るために飲酒すること (平成22年版「自殺対策白書」)

自殺に先立つサインがあります

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抑うつ的な気分や多大なストレスによる影響は、そのつもりがなくても、私たちの言動に表れます。いつもと同じ様に振る舞っているつもりでも、「最近、元気がないね。」と声をかけられるときなどは、自分でも気づかないうちに何かサインを発信していたのかもしれません。

  • 死にたいと繰り返し口にする
  • 仕事の段取りが悪くなる
  • 引きこもってしまう
  • 食べられなくなる
  • 眠れなくなる
  • お酒の量が増える
  • 生活リズムが乱れる

コラム

飲酒と自殺

国立がん研究センター 多目的コホート研究から(2006 British Jounal of Psychiatry)

「まったく飲まない」グループは、「時々飲む」グループより自殺のリスクが高い → まったく飲まないと答えた人で過去の飲酒状況がわかっている約6000人について、飲んでいたが止めた人(=健康上の理由などで飲まなくなった可能性があるが理由については調査せず、約1000人)と、もともと飲まない人(約5000 人)に分けて調査したところ、飲んでいたが止めた人の自殺リスクは、時々飲む人の6.7倍と特に高いことが分かった。

など、行動の変化が起こってきます。これらは、「本当は自殺なんかしたくない!」という深層心理が一生懸命に発信しているサインなのかも知れません。

 もし、家族や友人として、日頃から身近に接している人が、こういった様子や行動の変化があれば、勇気を出して声をかけてあげて下さい。

サインに気づいて関わることで自殺予防につながります。

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 身近な人、大切な人のちょっとした変化、サインに気づき、ケアするのが、「ゲートキーパー」です。

ゲートキーパーとは……

ゲートキーパーは、一人一人の存在やつながりを大切に関わってくれる人のことなので、医師等の専門家だけでなく、私たち市民の一人一人がゲートキーパーになることができます。

 日ごろの何気ないあいさつや交流をとおして、身近な人の「こころが発しているサイン」に、まずは気づき、声をかけ話を聴いてあげてください。誰かに話を聴いてもらうだけでこころが軽くなることも多いです。また、相談窓口を調べたり、その人に寄り添っていく等、日々のちょっとした関わりを続けていくことが自殺を防いでいくためにとても重要なことなのです。

 ゲートキーパーについては

ゲートキーパーになろう!|厚生労働省

自死遺族支援

どうか大切な人の自死のことであなた自身を責めないでください

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 自死で亡くなった人のことを愛おしむ気持ちから、その責任を「私が気づいてあげなかったからだ。」「私が至らなかったせいだ。」などと思っていませんか。それは、その人を大切に思う気持ちからすればごく自然なこころの動きです。そういう風に振り返る気持ちはとても大切です。でも、もしもあなたがそういう気持ちだけを大きくして、自分を責め続けて長く苦しんでいるのなら、感じ方を少し変えてみてほしいのです。

 なぜなら、その人の自死は、決してあなたのせいではないからです。

 自死に至った人を後で調べることでわかってきたことがあります。それは、健康問題や家庭問題などさまざまな問題を抱え、何とかしようと努力してもうまくいかず、次第に事態が複雑になり、深刻になる中で、悩みぬき、もう死ぬしか選択肢がないと思った末のことだったという事です。あなたの大切な人も、きっとこのように何かの事態に追い込まれた末のことだったのでしょう。あなたを責めたかったわけではないことを、どうかわかってあげてください。

どうか今の気持ちを話してみてください

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 大切な人の自死にショックを受け、重いものを背負った気持ちのまま、その苦しみを誰にも打ち明けずにいるのではありませんか。「話したところで何を言われるかわからない。」「私の過ちだと改めて指摘されるんじゃないか。」などと考え、こころの内を誰かに聞いてもらうことを思いとどまっていませんか。そうして、独りぼっちになっていませんか。

 確かに、とても残念なことですが、私たちの周辺では、その一部に、自死する人や遺された人をよく理解しないまま、誤解や偏見の目で見てしまうということがあるようです。そういう見方は、「自死を身近に経験したことがない」、「自死に至る過程を知らない」など、経験の範囲があなたより限られていて、あなたの今の気持ちを想像しにくいことも一因なのかもしれません。

 でも、あなたの近くには、あなたの気持ちを共有し、わかってくれる人がいます。京都市内には、あなたと同じ経験をした人たちが集まって、思いを語り、聴くという活動を続けておられる場所があります。また、こころの相談に応じてくれる専門家が、どんな話でもしっかり聴いてくれる場所もあります。そこでは「こうすべきだった。」などを言われることはありませんし、何を話しても安心していられます。まずは勇気を出して、気持ちを打ち明けてみませんか。そして少しでもあなたのこころを楽にしてあげてください。そうして、少しずつ、これからのあなた自身も大切にしていくことを、ぜひ考えていきませんか。

 1人で抱え込まないでください。話せる誰かがここにいます。

話を聞いてくれる人がいて、話せる場があります

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 京都市こころの健康増進センターでは、あなたの話をお聞きします。安心して、お電話してみてください。

 また、当センターでは自死遺族の方に、毎月第1、3木曜日の午後1時30分から こころのカフェきょうとによるフリースペースもあります。

 京都市が開催する「きょう ほっと あした ~くらしとこころの総合相談会~」でもお話をお聞きします。

○「きょう・こころ・ほっとでんわ」自死遺族・自殺予防こころの相談電話
075-321-5560 毎日24時間相談実施中

こころのカフェ きょうと フリースペース

大切な人を自死によって失った遺族は、思いがけない突然の出来事で、その事実をどう受け止めればよいのか戸惑い、なるべく周囲に気づかれないように生活しながら、悲しみ、苦しみ、辛さや不安、怒りと向き合っています。しかし、安心して語れる場所が少ないのが現状です。

このフリースペースは、自死遺族サポートチーム「こころのカフェ きょうと」が運営されています。ここでは、自死遺族の方が自由に気持ちを語り合える仲間がいます。

こころのカフェのスタッフと個別にお話をすることも可能です。

予約は不要です。直接会場にお越し下さい。

場所
京都市こころの健康増進センター
日時
毎月第1・第3木曜日(午後1時30分~午後3時30分)
参加費
お茶代として 200円
お問い合せ
090-8536-1729(午後6時〜午後9時)
自死遺族の分かち合いの場「こころのカフェきょうと」(例会)もあります。

京都市の自殺の現状と市の取り組み

京都市民の自殺の状況

京都市民の自殺の状況

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 京都市では、全国の傾向と同じく平成10年に自殺が急増し、それまでの年間220人程度から一気に350人ほどになりました。その後も年間300人を超える状況が続きましたが、ようやく平成23年あたりから減少し、平成28年では187人と急増前を下回りました。以降は200人前後で推移していますが、令和2年以降は全国同様増加傾向にあります。

しかし約147万人の京都市民の中から自殺で亡くなる人が毎年これほど出ていることは、私たちの深刻な問題です。

 京都は大学が多く全国から若者が集まってくる活気ある街ですが、その一方で若者の自殺が他に比べて多い傾向にあります。また、高齢者の自殺が多い地域、若者の自殺が多い地域など、地域ごとの差異が大きい傾向もあります。
私たちの街京都では、いのちの尊厳を大切にし、自殺について適切に理解し、力を合わせて、こころといのちを守っていかなければなりません。

コラム

自殺死亡率の国際比較(OECD,厚生労働省等の資料による、本川裕氏作成の図より)

自殺という問題は、世界的にみると宗教的な理由や、社会情勢・文化などによる影響も大きく、国によって差が大きいことが分かります。

また、社会構造や価値観等が大きく変化する時期には自殺は増加し、戦争があると自殺は減ると言われています。

京都市の自殺対策の取組について

京都市の自殺対策の取組について

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 全国の自殺者数は、平成10年以降、年間3万人前後で推移していましたが、平成22年以降、年々減少し、令和元(平成31)年には2万人を下回りました。しかし、令和2年は、新型コロナウイルス感染症の影響で自殺の要因となり得る様々な問題が悪化したことなどにより、特に、女性や小中高生の自殺者が増え、平成21年以降、11年ぶりに前年を上回りました。

 国においては、平成18年に『自殺対策基本法』を施行、平成28年に改正し、自殺対策を新たに「生きることの包括的な支援」と位置付け、国が率先して対策を推進しながら、都道府県及び市町村に、自殺対策についての計画策定することを義務付けるなど、関係機関の取組の促進を図りつつ、「誰も自殺に追い込まれることのない社会」の実現を目指し、対策を進めているところです。

 令和410月には、国の自殺対策の指針である「自殺総合対策大綱」が5年ぶりに見直されました。大綱では、自殺対策基本法の成立時とコロナ禍以前までを比較し、自殺者数が着実に減少していることについて、これまでの取組の成果としています。一方で、長期化するコロナ禍により人との接触の機会が減り、人との関わり合いや雇用形態をはじめとした様々な変化が生じていることから、引き続き、コロナ禍の自殺への影響の情報収集・分析をしつつ、新たに生じた課題への対策を推進することが盛り込まれました。

コラム

自殺とマスメディア(1)

「自殺の名所」などというものがありますが、報道や出版の影響が大きいとされています。

WHOはマスコミで自殺報道をする場合、詳細な手段の報道を避けること、様々な相談支援機関があることを示すことなどを「手引き」として公表しています。日本のマスコミはどうでしょう?WHOの「手引き」は厚生労働省のホームページから。

メディア関係者の方へ|自殺対策|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

 本市では、国の「自殺対策基本法」及び「自殺総合対策大綱」の趣旨を踏まえ、総合的な自殺対策を推進するために「きょう いのち ほっとプラン―京都市自殺総合対策推進計画―」を平成22年3月に策定しました。平成26年3月には中間評価、見直しを行ない、平成29年3月に計画を改訂し、さらなる充実をはかるとともに誰もが自殺においこまれない社会の実現にむけ取り組んでまいりました。

 計画の策定以降、全庁的に取組を進めてきた結果、令和元年には179人と過去最低の自殺者数となりました。しかし、新型コロナウイルス感染症が令和2年から日本全体に拡大して以降、全国の自殺者数と同様に、本市の自殺者数も増加に転じています。このような状況を受け、孤独・孤立対策や新型コロナウイルス感染症の影響による暮らしの不安やこころの悩みなど、新たな課題にも対応するため、令和4年度に「第3次 きょう いのち ほっとプラン」を策定し、「誰も自殺に追い込まれることのない京都市の実現」を目指して取り組んでおります。

コラム

自殺とマスメディア(2)

自殺報道で特定の手段や場所についてセンセーショナルな報道を避けるようにしたことで、

実際に自殺が減った例があります(1987年ウィーン)。逆に、タレントやアイドルの自殺報道が大々的に行われ、若い世代の自殺が増えたこともあります(1980年日本)。私たちの行動は、周囲のいろいろな情報の影響を受けているのです。

京都市の自殺対策シンボルマークと標語(平成19年度募集)
  • その悩み、少しの勇気で打ちあけて!きっと何かが変わるから
  • 悩まずに聞かせてくださいあなたの気持ち
  • 明日も君に、会えるよね

1 市民への普及啓発

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<京都市では今までこのような取り組みをしてまいりました>

(1)市民を対象としたシンポジウムや講演会の実施
・自殺予防と自死遺族支援のための府民・市民シンポジウム(平成27年度に第9回目を開催)
・アルコールと健康を考えるセミナー
・若者の薬物問題について考える講演会
自殺予防と自死遺族支援のための府民・市民シンポジウム自殺予防と自死遺族支援のための府民・市民シンポジウムアルコールと健康を考えるセミナー

(2)自殺予防週間(9月10~16日)、自殺対策強化月間(3月)におけるパネル展や
街頭啓発、フェイスブック等のSNSの配信

28年度からは「ライフin灯(ライト)きょうと」市役所前広場にて前年の京都府の自殺者数のキャンドルを並べ、イベントを開催しました。

 

(3)きょういのちほっとブック事業(市内図書館)の実施
きょう いのち ほっとブック事業(市内図書館)の実施(自殺予防週間)きょう いのち ほっとブック事業(市内図書館)の実施(自殺予防週間)きょう いのち ほっとブック事業(市内図書館)の実施(自殺予防週間)

(4)各関係機関への様々なパネル展への参加
パネル展

(5)電子媒体・フェイスブックを利用した普及啓発

   平成28年度から、区役所等行政情報放映用モニターにて自殺予防啓発ムービーを放映開始。

(6)各区こころのふれあいネットワーク事業による自殺予防についての啓発

(7)啓発物配布(研修会・ネットワーク事業・パネル展等のさまざまな場所にて配布)
啓発物配布

(8)市民しんぶん区民版挟み込みの発行(平成25年度まで)

(9)市バス・地下鉄車内・構内広告ポスター掲示(平成25年度まで)
市バス・地下鉄車内・構内広告ポスター掲示市バス・地下鉄車内・構内広告ポスター掲示市バス・地下鉄車内・構内広告ポスター掲示

(10)市バス3台 外側(大型)広告による啓発(平成23年度)

(11)ラジオ番組企画「いのちプロジェクト」による市民参加型啓発

(自殺対策キャンペーンソングを市民と一緒に作ろう)(平成23年度)

(12)KBSラジオによる啓発 (平成23年度)

(13)各種リーフレットの作成
勤労者向けリーフレット(京都商工会議所会員のうち比較的小規模な事業所、相談機関)(平成23年度)
・自殺に関連すると言われる疾患別リーフレット(統合失調症うつ病アルコール依存症)(平成24年度)

・「あなたもゲートキーパー」作成(平成28年度)

(14)市役所正面玄関でのパネル展、電光掲示版表示による啓発

(15)市政広報板での啓発(平成24年度まで)

2 相談・支援の充実

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  1. 自死遺族・自殺予防こころの相談電話(きょう・こころ・ほっとでんわ)の運営
  2. くらしとこころの総合相談会の開催
  3. 京都府自殺ストップセンター
    0570-783-797
     年中無休24時間対応 

3 人材育成

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人材育成人材育成人材育成

  • ゲートキーパー養成等のための研修会の実施
  • 宗教関係者への研修会(京都自死自殺相談センター委託事業 平成24年度、25年度)
  • かかりつけ医・産業医うつ病対策研修会の実施(年1回)
  • 一般科医・精神科医ネットワーク交流会(G-Pネット)の開催(年1回)各地区医師会との共同開催

4 自死遺族・自殺未遂者への支援

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  1. 自死遺族・自殺予防こころの相談電話の運営
  2. こころのカフェきょうと(自死遺族サポートチーム)への支援
    ・例会(分かち合いの会)の案内
    ・こころのカフェきょうと「フリースペース」への支援
  3. 医療機関と連携した自殺未遂者・ハイリスク者支援モデル事業(平成26年度委託事業)
    京都大学医学部附属病院
  4. 自死遺族支援のためのリーフレットの作成等啓発事業
    自死遺族支援のためのリーフレット  大切な人を自死でなくしたあなたへ(リーフレット)
  5. 自殺未遂者支援のリーフレットの作成 (平成23年度)

5 きょう いのち ほっとプラン―京都市自殺総合対策推進計画―

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京都市では、総合的な自殺対策を推進するために平成22年3月に「きょう いのち ほっとプラン―京都市自殺総合対策推進計画―」を策定しました。

下記から全文と概要版がダウンロードできます。

平成25年度 きょう いのち ほっとプラン―京都市自殺総合対策推進計画―(中間評価及び見直し)

下記から見直し計画の全文と概要版がダウンロードできます。

平成28年度 きょう いのち ほっとプラン―京都市自殺総合対策推進計画(改定)-

 ・「きょう いのち ほっとプラン―京都市自殺総合対策推進計画(改定)-」本冊

 ・「きょう いのち ほっとプラン―京都市自殺総合対策推進計画(改定)-」概要版

令和4年度 第3次 きょう いのち ほっとプラン(京都市自殺総合対策推進計画)

 ・「第3次 きょう いのち ほっとプラン(京都市自殺総合対策推進計画)」本冊

 ・「第3次 きょう いのち ほっとプラン(京都市自殺総合対策推進計画)」概要版